「魔法石10000個が半額!」「限定パックを格安で代行します!」
SNSや怪しいウェブサイトで、こんな甘い言葉を見かけたことはありませんか?
大好きなゲームに少しでもお得に課金したい。その気持ちは、ゲーマーなら誰しもが持っているものでしょう。
しかし、その「お得」という言葉の裏に、あなたの大切なアカウントと楽しいゲームライフを破壊する、恐ろしい罠が隠されているとしたら…?
この記事では、元ゲーム業界関係者の視点も交えながら、なぜ課金代行がこれほど危険なのか、その驚くべき仕組みと、利用者が陥る「5つの地獄」について、徹底的に解説していきます。
そもそも「課金代行」はどうやって成り立っているのか?
そこには、一見クリーンに見えるものから、完全な犯罪行為まで、いくつかの黒いカラクリが存在します。
為替レートの差額を悪用するグレーな手法
これが「一番マシ」に見える手口ですが、これだけでも十分にアウトです。
実は、ゲームの課金アイテムの価格は、世界共通ではありません。
例えば、あるアイテムが日本では10,000円で売られているとします。
しかし、経済状況が異なるトルコやアルゼンチンなどでは、同じアイテムが現地通貨で日本円換算6,000円程度で販売されていることがあります。
代行業者はここに目をつけます。
VPN(仮想プライベートネットワーク)という技術を使い、自分のアクセス元を物価の安い国に偽装。
そして、あなたから預かったアカウントでゲームにログインし、その国の安い価格で課金を実行するのです。
あなたから8,000円を受け取り、実際には6,000円で課金する。差額の2,000円が業者の利益になるというわけです。
そう思ったあなたは要注意。
この行為は、ほぼ全てのゲームの利用規約で明確に禁止されている「不正アクセス」や「RMT(リアルマネートレード)」に該当します。
運営会社は、アカウントのアクセス元を常に監視しています。
昨日まで日本からアクセスしていたアカウントが、突然アルゼンチンから課金を行えば、即座に異常を検知され、アカウント凍結(BAN)の対象となる可能性が極めて高いのです。
盗まれたクレジットカードを利用する完全な”犯罪”
これが、悪質な課金代行の主流となっている手口です。
代行業者は、ダークウェブなどの違法なルートを通じて、不正に入手した他人のクレジットカード情報を大量に購入します。
そして、あなたから預かったアカウントに、その盗難カード情報を使って課金するのです。
流れはこうです。
業者が、あなたから5,000円分の課金依頼を3,000円で受ける。
業者は、盗んだAさんのクレジットカード情報で、あなたのアカウントに5,000円分の課金をする。
あなたはアイテムをゲットし、業者に3,000円を支払う。業者は丸儲け。
後日、Aさんがカード明細を見て不正利用に気づき、カード会社に連絡。
カード会社は調査の上、ゲーム会社への支払いをキャンセルする。
この時点で、ゲーム会社は5,000円分のアイテムをあなたに渡したにもかかわらず、代金を受け取れない「踏み倒され」状態になります。
当然、ゲーム会社はこの不正を見逃しません。
その結果どうなるかは…後ほど詳しく解説します。
手口③:支払い後の「不正返金(チャージバック)」を悪用する”詐欺”
これも非常に悪質で、多くの業者が使う手口です。
一見、業者は自分自身の「正規の」クレジットカードで課金を行います。
しかし、課金が完了してアイテムがあなたのアカウントに反映された後、業者はすぐさまAppleやGoogle、またはカード会社に「子供が勝手に課金した」「身に覚えのない請求だ」などと嘘の申告をします。
プラットフォーム側は、一定の条件下で返金申請(チャージバック)を認めざるを得ない場合があります。
返金が認められると、業者にはお金が戻ってきますが、ゲーム会社への支払いはキャンセルされます。
結果は手口②と同じ。
あなたはアイテムを手に入れ、業者はあなたからの代金とプラットフォームからの返金で二重に儲ける。
そして、踏み倒されたゲーム会社は、その不正が行われたアカウントに対して断固たる措置を取るのです。
利用者が陥る5つの地獄
その考えが、取り返しのつかない事態を招きます。
課金代行を利用することで、あなたは以下のような「地獄」に足を踏み入れることになるのです。
地獄①:アカウントの永久停止(BAN)という最悪の結末
これが最大かつ最も現実的なリスクです。
あなたが何年もかけて育て、共に笑い、泣いたキャラクターたち。
たくさんの思い出が詰まったそのアカウントが、ある日突然、ログインできなくなります。
運営会社は、前述した「海外からの不審なアクセス」や「チャージバックによる支払いキャンセル」をシステムで常に監視しています。
不正が検知されると、まずゲーム内通貨がマイナスになる措置が取られることがあります。
例えば、5,000円分の不正課金が発覚すれば、あなたの持つ魔法石が「-300個」のように表示され、正規に課金してマイナス分を補填しない限り、ゲームのプレイが大幅に制限されます。
しかし、多くの場合、そんな警告すらありません。
悪質な不正と判断されれば、問答無用で「アカウント永久利用停止」の処分が下されます。
一度BANされたアカウントは、どれだけ泣きついても、二度と戻ってくることはありません。
数千円をケチった代償が、数十万、数百万円以上つぎ込んできたかもしれないアカウントデータの完全消滅なのです。
地獄②:アカウント乗っ取りと個人情報漏洩の恐怖
課金代行を依頼するということは、業者に自分のアカウントIDとパスワードを渡す行為です。
これは「見ず知らずの他人に、自分の家の合鍵を渡す」のと同じくらい無防備で危険な行為です。
親切なフリをしていた業者が、課金完了後にパスワードを変更し、あなたのアカウントを乗っ取ってしまうケースは後を絶ちません。
乗っ取られたアカウントは、他の人に高値で転売されたり、悪質なプレイに使われたりします。
さらに恐ろしいのは個人情報漏洩です。
ゲームアカウントにSNSを連携させていませんか? 本名やメールアドレスを登録していませんか? それらの情報がすべて業者に筒抜けになり、他の犯罪に利用されたり、あなたの友人や知人にまで迷惑がかかったりする可能性があるのです。
地獄③:あなたが「犯罪の片棒」を担がされるという事実
もし、あなたが利用した業者が盗難クレジットカードを使っていた場合、どうなるでしょう。
あなたが業者に支払ったお金は、回りまわってクレジットカード情報を盗み、売買するような犯罪組織の活動資金になります。
「知らなかった」では済まされません。
あなたは間接的に、詐欺や情報窃盗といった重大な犯罪に加担していることになるのです。
自分のちょっとした欲が、どこかの誰かを不幸にし、犯罪を助長している。
その事実を、あなたは受け止められますか?
地獄④:お金だけ騙し取られる「持ち逃げ」詐欺
そもそも、相手は素性の知れない赤の他人です。
「格安で課金します」と持ちかけられ、指定された口座にお金を振り込んだ途端、相手はSNSアカウントを削除し、完全に連絡が取れなくなる…という単純な詐欺も非常に多く発生しています。
個人間のやり取りであるため、警察に相談しても犯人の特定は困難を極め、お金が戻ってくる可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
安く課金できるどころか、お金をドブに捨てるだけの結果に終わるのです。
地獄⑤:ウイルス感染やフィッシング詐欺への新たな入口
業者とのやり取りの中で、「専用のツールを使うので、このアプリをインストールしてください」「こちらのサイトからログインしてください」などと、不審なURLやファイルのダウンロードを指示されることがあります。
それらは、あなたのスマートフォンやPCにウイルスを仕込んだり、個人情報を抜き取ったりするための罠(フィッシング詐G)である可能性が高いです。
ゲームアカウントだけでなく、スマホに保存されている写真、連絡先、各種サービスのログイン情報など、すべてが危険に晒されることになります。
まとめ
課金代行の「安さ」は、為替の歪み、他人の不幸、そして完全な犯罪行為の上に成り立つ、非常に脆い蜃気楼です。
その蜃気楼に手を伸ばした瞬間、あなたはこれまで築き上げてきた大切なものを全て失うリスクを背負うことになります。
少しでも安くゲームを楽しみたい、その気持ちは痛いほど分かります。
しかし、正規のルートで課金することは、単にアイテムを手に入れるだけでなく、素晴らしいゲームを開発・運営してくれるクリエイターたちへの「応援」であり、「感謝」の証でもあります。
その応援を裏切り、不正な手段に手を染めた先に、楽しいゲームライフは絶対に待っていません。
あなたの楽しい思い出が詰まった大切なアカウントを守るために。
そして、これからも安心して大好きなゲームを楽しみ続けるために。
課金代行という甘い誘惑には、絶対にのらないでください。