「フルパで勝ちたいけど、的確な指示が出せない…」
「自分がIGLをすると、なぜかチームの雰囲気が悪くなって負けてしまう…」
5人1組で勝利を目指すVALORANTにおいて、チームの頭脳であり心臓でもあるIGLの存在は、勝敗を大きく左右する重要なファクターです。
しかし、その役割は非常に難しく、ただ指示を出せば良いというものではありません。
味方のパフォーマンスを最大限に引き出し、チームを勝利へ導く「良いIGL」がいる一方で、良かれと思って出した指示が逆にチームを混乱させ、敗北に繋げてしまう「ダメなIGL」も存在します。
この記事では、その両者を分ける決定的な違いは何か、そして「良いIGL」になるためには具体的に何を意識すれば良いのかを、初心者にも分かりやすい例え話を交えながら、徹底的に解説していきます。
全ての根源はここにある!「目的地」を共有できているか?
本題に入る前に、全てのIGLに考えてみてほしい問いがあります。
それは、「あなたはラウンド開始前に、作戦の『目的地』を味方に伝えていますか?」ということです。
少しイメージしやすいように、全く別のシチュエーションを想像してみましょう。
あなたが友人と街を歩いているとします。
その時、リーダー役の友人が次のように言ったとしたら、どちらの友人に安心してついていきたいと思いますか?
- 良いリーダー
「ねぇ、駅前に新しくできたスタバに行かない?あそこのコーヒーが美味しいらしいんだ!」
- ダメなリーダー
(目的地を告げずに)「とりあえず、この通りを真っ直ぐ行って。…あ、そこを右に曲がって!違う違う、その次の角!ほら、左側に見える緑色の看板の店!早く入って!」
言うまでもなく、前者でしょう。
なぜなら、「スタバに行く」という明確な目的地が共有されているからです。
目的地が分かっていれば、私たちは安心して歩けますし、途中で「あ、この近道知ってるよ」「喉乾いたから自販機で水買っていかない?」といった提案もできます。
リーダーが万が一トイレに行っても、私たちはその場で待つことも、先に向かうこともできます。
一方で後者の場合、私たちはどこに向かっているのか全く分かりません。
ただリーダーの指示に従って歩くだけ。
これでは不安ですし、主体的な行動は一切生まれません。
リーダーの指示が少しでも遅れれば、私たちはその場で立ち尽くしてしまいます。
VALORANTにおけるIGLの違いも、本質的にはこれと全く同じです。
- 良いIGLは、ラウンドが始まる前に「Aサイトをラッシュで取る」「Bサイトをリテイクで守り切る」といった、そのラウンドにおける作戦の『目的地』をチーム全員に共有します。
- ダメなIGLは、その目的地を伝えないまま、試合が始まってから「前に進んで!」「スモーク焚いて!」「なんでそこにいるの!」と、味方の行動一つひとつを逐一指示(マイクロマネジメント)しようとします。
この根本的なスタンスの違いが、これから解説する全ての具体的な行動の差となって現れ、最終的にチームの勝敗に直結するのです。
味方を覚醒させる「良いIGL」の3つの特徴
それでは、先ほどの「スタバの例え」を念頭に置きながら、「良いIGL」が実践している具体的な行動を3つの特徴に分けて深掘りしていきましょう。
作戦の「意図」と「目的」を共有する
良いIGLが行う最も重要な仕事は、戦闘が始まる前に、作戦の全体像を共有することです。
これは「Aに行く」と伝えるだけではありません。
なぜAに行くのか、どのようにしてAを取るのか、その「意図」と「目的」まで伝えることが鍵となります。
人間は、行動の理由や目的を理解した時に、最も高いパフォーマンスを発揮します。
ただの「作業」ではなく、目的達成のための「ミッション」として認識することで、主体性や責任感が生まれるからです。
- ダメな指示
「Aラッシュ」
- 良い指示
「相手はエコラウンドだから、一気にAにラッシュして武器を回収させずにラウンドを取り切ろう。目標はキルよりもスパイク設置と時間稼ぎだ」
後者のように伝えられた味方はどう動くでしょうか?
「なるほど、武器を渡さず勝つのが目的なら、無理な撃ち合いは避けて、サイトに入ってからの生存を優先しよう」
といったように、各々が自分の役割を理解し、目的達成のために最も効果的なスキルや動きは何かを自律的に考え始めるのです。
これが、ダメなIGLの下ではただの駒として動かされていたプレイヤーが、良いIGLの下では自ら考える優秀な兵士へと変わる瞬間です。
試合中は「号令」と「修正」に徹する
購入フェーズで目的を共有しているため、良いIGLは試合中に多くを語る必要がありません。
彼らの試合中の役割は、主に2つに集約されます。
それは「号令」と「修正」です。
「号令」とは、作戦実行のトリガーとなる短いコールです。
どれだけ良い作戦を立てても、5人がバラバラのタイミングで動いては意味がありません。
全員の足並みを揃えるためのGOサイン、それが号令です。
- 「スモーク展開を確認。3、2、1… GO!」
- 「敵がサイトに入った。ULTに合わせてリテイク開始!」
- 「敵のスキルが尽きた。今がチャンス、全員で詰めるぞ!」
これらのコールは、簡潔でありながら、チームの行動を一瞬で一つにする力を持っています。
「修正」とは、予期せぬ事態に対応するためのプラン変更の指示です。
VALORANTでは、立てた作戦が完璧に通じることの方が稀です。
敵の思わぬ抵抗にあったり、重要なエリアを先に抑えられたり、様々な不測の事態が起こります。
その際に、チームが混乱に陥らないよう、次の目的地を示すのがIGLの重要な役割です。
- 「Aラッシュが完全に読まれてる。無理せず引いて、静かにBにローテートしよう」
- 「敵のオペレーターが強すぎる。ミッドを4人でコントロールして、サイトを挟む形に切り替える」
戦闘中に長々と状況説明をする必要はありません。
重要なのは、「今のプランは破棄し、次のプランはこれだ」と明確に、そして冷静に伝えることです。
これにより、チームは混乱から素早く立ち直り、次の行動に移ることができます。
ポジティブな雰囲気を作り出す「ムードメーカー」である
VALORANTはメンタルスポーツの側面が非常に強いゲームです。
たった一つのミス、たった一言のネガティブな発言が、チーム全体のパフォーマンスを著しく低下させることがあります。
良いIGLは、戦術的なリーダーであると同時に、チームの精神的支柱となる「ムードメーカー」でもあります。
- 味方がスーパープレイをした時
「ナイスクラッチ!」「そのカバー最高すぎる!」と、自分のことのように喜び、称賛を惜しみません。
- 味方がミスをした時:
「ドンマイ!誰にでもあるミスだ、切り替えていこう!」「惜しかったな!次は俺がカバーする!」と、決して責めずにフォローします。
- チームが不利な状況の時
「大丈夫、まだ2本差だ。ここから逆転できる!」「1本ずつ、集中していこう!」と、最後まで諦めない姿勢を見せ、チームを鼓舞します。
このようなポジティブな環境、いわゆる「心理的安全性」が確保されたチームでは、プレイヤーはミスを恐れずにのびのびとプレイできます。
その結果、思い切ったスーパープレイが生まれたり、不利な状況でも粘り強く戦えたりと、チーム全体の力が底上げされるのです。
チームを崩壊させる「ダメなIGL」の3つの特徴
一方で、良かれと思ってやっている行動が、実はチームを崩壊させている「ダメなIGL」にはどのような特徴があるのでしょうか。
こちらも3つのポイントに分けて見ていきましょう。
目的を言わず「行動」だけを指示する(マイクロマネジメント)
これは「スタバの例え」で言うところの、目的地を告げずに道順だけを指示するリーダーです。
彼らは味方を信頼できず、全てを自分のコントロール下に置きたいという欲求から、味方の行動を一つひとつ細かく指示しようとします。
- 「ジェット、そこからダッシュして、右の角にクラウドバースト投げてからブレードストーム使って…」
- 「ソーヴァ、今リコン撃たないで!俺が言うまで待って!」
このようなマイクロマネジメントは、味方から「考える力」と「モチベーション」を奪います。
プレイヤーは「どうせ指示されるから…」と、自ら状況を判断することをやめてしまい、完全に「指示待ち」のロボットと化してしまいます。
これでは、IGLが把握していない場所で起きた不測の事態に、誰も対応することができません。
喋りすぎる(情報とノイズの区別がついていない)
ダメなIGLは、自分が得た情報を全て声に出さないと気が済みません。
「あ、敵見えたかも」「うわ、今のエイム最悪だ」「ここにスモーク欲しかったな…」といった、個人的な感想や不必要な独り言までVC(ボイスチャット)で垂れ流してしまいます。
しかし、これらの発言のほとんどは、味方にとっては勝利に貢献しない「ノイズ」でしかありません。
VALORANTにおいて、VCで伝えるべき「情報」とは、敵の位置、人数、HP、武器、使用したスキルなど、客観的な事実です。
味方は、その貴重な「情報」と、敵が出す微かな「足音」を頼りに戦っています。
IGLのノイズは、それらの重要な音や情報をかき消し、味方の集中力を著しく削いでしまうのです。
感情的になり、味方を批判する
最も悪質なのが、このタイプです。
自分の思い通りに事が進まないとイライラし、その原因を味方のせいにして批判を始めます。
- 「なんでそこにいるんだよ!意味わかんない!」
- 「今の撃ち合い、なんで負けるかなぁ…」
このようなネガティブな発言は、チームの雰囲気を最悪にし、「負のスパイラル」を生み出します。
IGLに批判された味方は萎縮し、次のプレイでもミスを恐れて消極的になります。
その消極的なプレイがまた新たなミスを呼び、IGLがさらに怒る…という悪循環です。
このようなIGLが率いるチームでは、プレイヤーはIGLの顔色を伺うことに必死になり、本来の実力を発揮することなど到底できません。
まとめ
ここまで、良いIGLとダメなIGLの違いを徹底的に解説してきました。
IGLとは、単に指示を出す独裁者ではありません。
チームの勝利という「目的地」へ、仲間を導く優秀なナビゲーターであり、苦しい時もチームを盛り上げるムードメーカーでもあります。
この記事が、あなたのIGLとしての成長、そしてあなたのチームを勝利に導くための一助となれば幸いです。