お金を出して購入したゲームアカウントが、ある日突然ログインできなくなる。「取り返し」被害に遭い、売主に連絡しても無視される絶望感は計り知れません。
「警察に行けばお金は戻るのか?」という疑問に対し、警察が動くための条件と、なぜ購入したアカウントは簡単に取り返されてしまうのか、その仕組みを解説します。
警察相談の現実と「被害届」のハードル
結論からお伝えすると、ゲームアカウントの取り返し被害において、警察がすぐに動き、被害届を受理して捜査を開始する可能性は非常に低いのが現実です。
これには明確な法的・システム的な理由があります。
警察には「民事不介入」という原則があり、個人間の売買トラブル(お金を払ったのに商品が使えなくなった等の契約不履行)には介入できません。警察が動くには、それが「詐欺罪」であるという確実な証拠が必要です。しかし、詐欺罪を立証するには、「最初から騙すつもり(最初から取り返すつもり)で販売した」という「故意」を証明しなければなりません。
もし相手が警察に対して「ハッキングされたと思ったので取り戻した」「パスワード管理を間違えた」などと主張した場合、それは「勘違い」や「契約上のトラブル」と見なされ、刑事事件として扱うことが難しくなります。
ただし、完全に意味がないとは言い切れません。同様の取り返し被害がその出品者に多発している場合などは、警察相談専用電話「#9110」などに相談履歴を残すことで、将来的な捜査の材料になる可能性はゼロではありません。
ゲーム会社の「利用規約」と警察のスタンス
ここで大きな壁となるのが、多くのオンラインゲームで定められている「RMT(リアルマネートレーディング)禁止」という利用規約です。
アカウントの売買自体は、日本の法律で直ちに「違法(犯罪)」となるわけではありません。しかし、ゲーム会社の規約では「禁止行為」とされています。
警察側の視点では、「ゲーム会社が禁止している行為を、リスクを承知で行った上でのトラブル」と判断される傾向があります。「本来やってはいけない契約で揉めている」という状態であるため、警察も積極的な介入を避ける傾向にあります。
あなたが悪いというわけではありませんが、「規約違反の取引=法的な保護を受けにくい状態」であるという事実は、解決を難しくしている大きな要因の一つです。
なぜ「取り返し」が可能なのか?アカウント管理の仕組み
「パスワードを変更したから安全」というのは、残念ながら今のゲームアカウントのシステム上、通用しません。なぜなら、ゲーム運営会社にとっての「正当な持ち主」とは、「そのアカウントを最初に作成した人(ファーストオーナー)」だからです。
多くのゲームでは、紛失時のための「アカウント復旧フォーム」が存在します。ここで求められるのは、以下のような情報です。
- アカウントを作成した正確な日時
- 最初に使用していた端末の機種名
- 初めて課金した時のレシート画像
- 初期登録していたメールアドレス
これらの情報は、基本的にファーストオーナー(売主)しか知り得ません。売主が運営に「アカウントが乗っ取られた(あなたにアクセスされたこと等を指して)」と連絡し、これらの正しい情報を提示すれば、運営は「正当な持ち主がハッキング被害に遭った」と判断し、パスワードを強制リセットして売主に権限を戻してしまいます。
つまり、システムの裏側では、「購入者のあなたが不正侵入者」として処理され、取り返した売主が「被害者」として扱われる構造になっているのです。これが、3週間後だろうが1年後だろうが、ファーストオーナーがいつでも取り返しが可能である物理的な理由です。
まとめ
- 警察は「民事不介入」の原則と「詐欺の故意」の立証が難しいため、即座に動くことは稀である。
- ゲームの復旧システムは「最初の作成者」を絶対的に保護する仕様のため、パスワード変更などの対策では取り返しを防げない。
非常に悔しく、理不尽な思いをされていることとお察しします。しかし、この仕組みを知ることは、これ以上の無駄な労力や精神的な消耗を防ぐための第一歩です。今回の経験を知識に変え、リスクのない安全な方法でゲームを楽しめる環境へ目を向けていきましょう。