この記事を読めば、難解なパラレルワールドの設定から最新のドロドロとした人間関係まで、VALORANTの全ストーリーが繋がり、納得できるようになります。
「2つの地球」という大前提:アルファとオメガの決定的な格差
VALORANTの世界観を理解する上で、最も重要かつ最初に躓きやすいのが「鏡合わせの2つの地球」という設定です。敵として現れる同じ顔のエージェントは、クローンや偽物ではありません。「別の歴史を歩んだパラレルワールドの本人」です。
2030年頃、「ファーストライト(First Light)」と呼ばれる謎の事象が発生しました。これにより、人類は超能力を持つ「ラディアント」の誕生と、未知のエネルギー物質「ラディアナイト」を発見します。そしてこの時、世界は2つのタイムラインに分岐しました。
ここに、戦争が起きる構造的な原因があります。2つの地球は、その環境に天と地ほどの差があるからです。
- アルファ・アース(Alpha Earth):
私たちが主に操作する側の世界(防衛側)。ラディアナイト資源が豊富で、生態系も安定しており、「豊かな地球」です。 - オメガ・アース(Omega Earth):
敵として現れる側の世界(攻撃側)。ラディアナイトが枯渇し、気候変動で壊滅寸前の「貧しい地球」です。海面上昇などの環境破壊が深刻化しています。
オメガ側の住人にとって、アルファ・アースへの侵攻は「悪意ある侵略」ではなく、「自分たちの世界を救うための資源回収(サバイバル)」です。彼らのラディアナイトは出力が弱く、文明を維持するには、豊かなアルファ・アースから資源を奪うしかないのです。
スパイクの正体と「キングダム」企業の裏側
ゲーム内では爆破勝利となりますが、ストーリー上のスパイク(Spike)は破壊兵器ではなく、「次元間ラディアナイト転送装置(テレポーター)」です。
オメガ側のエージェント(攻撃側)が特定のサイトにスパイクを設置するのは、そのエリアに保管・埋蔵されているラディアナイトを吸い上げ、自分たちの世界(オメガ)へ転送して持ち帰るためです。一方、アルファ側(防衛側)が解除するのは、自国の重要エネルギー資源を根こそぎ奪われるのを防ぐためです。
この資源を管理しているのが、両方の世界に存在する巨大企業です。
- キングダム・コーポレーション(Alpha):
利益を追求してラディアナイトを採掘する巨大複合企業。 - キングダム・インダストリーズ(Omega):
生命維持システム(ライフライン)を作るためにラディアナイトを必要とする企業。
例えば、マップ「バインド」は製油所、「ヘイヴン」は貯蔵施設、「パール」はオメガ側の海面上昇から都市を守るためのドーム都市です。すべてのマップには「資源がある」か「資源を守る技術がある」という明確な理由が存在します。
秘密組織「プロトコル」と英雄「レギオン」の対立構造
ここが非常にややこしく、かつ面白いポイントです。実は、2つの世界では組織の在り方と世間の認識が真逆になっています。
アルファ側:VALORANT プロトコル(秘密組織)
アルファ・アースでは、パラレルワールドの存在は一般市民に隠されています。
そのため、かつてオメガ側のジェットがアルファ側のヴェネツィアを襲撃し、スパイクの影響で街の一部を浮遊させた事件(マップ「アセント」の誕生)が起きた際、アルファ側の市民は「私たちの世界のジェットがテロを起こした」と誤解しました。
アルファのジェットが指名手配されているのは、このオメガ側の自分が犯した罪を被せられているからです。
オメガ側:VALORANT レギオン(公的英雄)
逆にオメガ・アースでは、彼らは「世界を救う英雄」として公に活動しており、市民もアルファ・アースの存在を知っています。彼らは「豊かな世界(アルファ)から資源を取り戻す正義の軍隊」として支持されているのです。
オメガのエージェントたちが必死なのは、彼らの背後に「滅びゆく故郷の市民たち」がいるからです。
最新情勢:資源戦争から「復讐」へのドロドロした変化
その感覚は正解です。最新のストーリーライン(2026年時点の設定)では、状況が劇的に悪化しています。
- オメガ側(レギオン)は作戦の失敗が続き、限界を迎えてしまいました。
特に衝撃的なのが、回復役であるオメガ・セージの状態です。彼女は激しい戦闘で蘇生能力を使いすぎた結果、体が結晶化してしまい、現在はカプセルの中で生命維持されているような悲惨な状態にあります。もう戦うことはできません。
さらに、オメガ・チェンバーが重傷を負ったことをきっかけに、彼と恋仲にあるオメガ・ヴァイパーの堪忍袋の緒が切れました。オメガ・ヴァイパーは、弱腰だったリーダーのオメガ・ブリムストーンを追放(クーデター)。
ブリーチ、ヨル、ソーヴァなどを引き連れ、実権を掌握。目的を「資源回収」から、アルファ側のエージェントそのものを抹殺する報復」へと切り替えました。
かつては「生きるため」の戦争でしたが、現在は「やられたからやり返す」という個人的な復讐と暗殺のフェーズに突入しています。最近の動画でアルファ側のエージェントたちが襲撃されているのは、この方針転換が原因です。
その他の重要キーワードと勢力(オマケの深掘り)
メインの対立構造以外にも、いくつかの重要な伏線が存在します。
- KAY/O(ケイ・オー):
彼は「ラディアントが人類を滅ぼした絶望的な未来」からタイムスリップしてきたロボットです。ブリムストーンの親友の魂が宿っていることが示唆されており、彼の目的は、過去(現在)を変えてその悲惨な戦争を食い止めることです。
- オーメンと「砂時計の末裔(Scions of Hourglass)」:
オーメンはかつて、古来よりラディアントの存在を隠蔽してきた秘密結社「砂時計の末裔」の暗殺者でした。ヴァイパー(サビーヌ博士)の実験によって現在の姿になりましたが、この「砂時計」という組織はマップ「アビス」にも関連しており、第3の勢力として暗躍しています。
- フラクチャーの事故:
マップ「フラクチャー」は、アルファとオメガが共同研究していた施設でした。しかし、両世界のチェンバーが結託して意図的に事故を起こし、施設を崩壊させました。チェンバーだけは、敵味方を超えて独自の目的で動いています。
まとめ
- 戦いの根本原因は、豊かな「アルファ・アース」と崩壊寸前の「オメガ・アース」による生存競争である。
- スパイクは爆弾ではなく、オメガ側が自国を救うために資源を持ち帰るための「転送装置」である。
- 最新のストーリーでは、オメガ側の疲弊(セージの戦闘不能など)により、資源確保よりも「敵エージェントの抹殺(復讐)」へと目的が過激化している。
VALORANTは単なるシューティングゲームではなく、こうした「正義と正義の衝突」や「物理的な限界」が緻密に描かれた群像劇です。次にプレイする際は、マップの背景にある「守るべきもの」や、敵エージェントが背負っている「故郷への想い」を想像してみると、今までとは違った景色が見えてくるはずです。