『終末ツーリング』の作中で何気なく登場した「1000円硬貨」。
この高額な硬貨は、終末前の日本で深刻なインフレが起きていたことを示唆しているのでしょうか?
今回は、この一枚の硬貨から、作品世界の経済状況を考察していきます。
1000円硬貨
海ほたるの自動販売機の下から、ヨーコは令和13年(2031年)に発行された1000円硬貨を発見します。
一般的に、高額な紙幣や硬貨が新たに発行されるのは、インフレーションによって通貨の価値が下落している状況を示唆します。
現実の歴史でも、ジンバブエがハイパーインフレに見舞われ、「100兆ジンバブエドル」紙幣が発行されたのは有名な話です。
しかし、作中で発見されたのはこの1000円硬貨のみで、他の高額通貨に関する情報はありません。
そのため、本当に深刻なインフレが起きていたのかは断定できません。
もしかすると、キャッシュレス化が進む一方で、小額決済における利便性や耐久性を重視し、1000円札の代わりとして硬貨が発行されただけ、という可能性も考えられます。
箱根の料金が普通?
【箱根編】でヨーコたちが訪れた土産物店には、壁に「203?年」(下一桁は不明)の箱根駅伝ポスターが貼られていました。
このことから、この店は少なくとも2030年代に営業しており、人類が姿を消す2040年頃まで存続していたと推測できます。
店内に残されたメニューには、アイスクリームやラーメンなどの価格が表示されていましたが、その値段は現代の私たちから見てもごく一般的なものでした。
チャーハンやラーメン:750円~1000円
アイスクリーム:400円
観光地の価格設定としては、むしろ安価とさえ言えるかもしれません。
1000円硬貨が発行されるほどの深刻なインフレが起きていたとすれば、このような価格設定は不自然です。
終末前の日本の物価は、実際にはそれほど高騰していなかったのではないでしょうか。
お姉ちゃんの【つーりんぐらむ】によれば、彼女は2035年に箱根を訪れています。
つまり、ヨーコたちが見たメニューの価格は、2035年以降のものである可能性が高いです。
これらの情報を整理すると、次のような仮説が立てられます。
令和13年(2031年)頃、日本は一時的にインフレに見舞われ1000円硬貨が発行された。
しかし、その経済混乱は比較的短期間で収束し、2035年頃には物価が安定を取り戻していた。
終末直前の日本は、私たちが想像するよりも平穏な経済状況だったのかもしれません。
物資不足という問題があった?
一般的に、高額な通貨は偽造防止技術を盛り込みやすい紙幣で作られます。
製造コストも、金属の塊である硬貨より紙幣の方が安いのが普通です。
しかし、もしこの常識が覆る事態、つまり「紙幣を作るコストが、硬貨を作るコストを上回る」という逆転現象が起きていたらどうでしょうか。
紙幣はただの紙ではありません。
特殊な植物繊維、偽造防止用のホログラム、特殊インクなど、様々な希少資源と高度な技術の結晶です。
もし、これらの原料が輸入できなくなったら?
この疑問から、新たな説が浮かび上がります。
終末前の日本は、国際的に孤立し、深刻な資源不足に陥っていたのではないか。
その原因として考えられるのが、武力衝突を伴わない「経済戦争」あるいは「冷戦」です。
世界的な緊張関係の悪化により、日本は経済制裁を受け、あるいは自ら貿易を縮小し、紙幣の原料を含む多くの物資を輸入できなくなった。
国内の資源だけで通貨を製造せざるを得ない状況に追い込まれ、比較的調達しやすい金属を使った硬貨製造へとシフトした……。
この仮説ならば、1000円札に代わる存在として、国内の技術と資源で製造できる「1000円硬貨」が発行された理由を説明できます。
さらに、作中の廃墟が比較的綺麗な形で残っているのも、物理的な破壊を伴わない「静かな戦争」だったと考えれば納得がいきます。
「1000円硬貨」はインフレの象徴ではなく、日本の国際的孤立と、静かに迫る物資枯渇の時代を物語る証拠だったのかもしれません。
コミックマーケットも紙不足が理由で開催が困難に?
『終末ツーリング』の考察ブログ、今回は【東京ビッグサイト編】をお届けします。当時のオタクたちが重要な情報をホワイトボードに書き残してくれています! >>前回【世田谷編】の考察記事はコチラ[…]
【東京ビッグサイト編】には、『コミックマーモット』というイベントが登場します。
このイベントは、人々が避難や脱出を口にするような混乱した状況下で「第121回」として開催されていました。
ここで、現実の「コミックマーケット」の開催ペースを参考に計算してみましょう。
現実のコミケは年2回開催。(2025年末で第107回に到達予定)
このペースで続けば、第121回は2032年頃に開催される計算です。
しかし、この「コミックマーモット」のホワイトボードが書かれた時期は、終末が迫る2040年頃と推測されます。
順当に開催されていれば、第140回近くになっているはずです。
この開催回数の大きなズレは、およそ数年間、イベントが開催されなかった「空白期間」があったことを示唆しています。
この「空白期間」と1000円硬貨の謎を結びつけると、新たな仮説が浮かび上がります。
- 深刻な紙不足により、紙幣の新規製造が困難になった。
- そして、同じ理由で、大量の紙を消費するコミックマーケットも開催中止を余儀なくされたのではないか。
『コミックマーモットの開催回数』という一見無関係な情報が、1000円硬貨の謎を解く鍵となり、「資源不足説」の信憑性を一気に高めています!
