『終末ツーリング』の序盤、ヨーコたちが訪れる横須賀港。
そこに広がる巨大なクレーターは、何者かの攻撃によってもたらされた、悲劇的な事件の痕跡でした。
当時の生き残りシュワちゃん
横浜ベイブリッジの周辺で、アイリが発見した上半身だけのロボット。
彼こそが、事件の記憶を持つサイボーグ「シュワちゃん」(ロボお父さんこと鈴木一朗)です。
身体は機械ですが、その記憶は生身の人間のものでした。
今回は、彼の記憶に残る回想シーンを中心に、あの日に何が起きたのかを考察していきます。
避難中に攻撃された横須賀港
民間人を乗せた自衛隊のものと思われる艦船が、どこかへ避難しようとしている。しかし、その背後の横須賀港はすでに大炎上しており、他の船は沖へ逃げ惑っている。現場の隊員たちも状況を全く把握できていない様子で、横浜港への退避を試みようとした、その瞬間――。画面が閃光に包まれ、巨大な爆発が起こります。
これがシュワちゃんの回想シーンです。
そして今の横須賀港だった場所には巨大なクレーターが残っています。
この状況から、横須賀港は少なくとも2段階の攻撃を受けていることがわかります。
まず「港の炎上」、そして「巨大な爆発」です。
さらに、その前段階として、人々が「避難しなければならない状況」に追い込まれていたと考えられます。
巨大な爆発を起こしたのは誰?
まず、ヨーコたちが見たクレーターは、ほぼ真円に近い形をしています。
隕石の落下跡は進入角度によって楕円形になることもあるため、このクレーターが真円であることは、攻撃がほぼ真上から行われたことを示唆しています。
回想シーンで描かれた爆発の瞬間も、核兵器のようなキノコ雲ではなく、天からの一条の光が降り注ぐ、レーザー攻撃のような描写でした。
アイリが放つレーザーとも似ています。
真上からの一撃。そして、現場の自衛隊員が全くそれを予知できていなかったこと。
これらの事実を総合すると、人間の目では確認できないほどの高高度、つまり宇宙空間からのレーザー攻撃であった可能性が極めて高いと言えるでしょう。
横須賀港の炎上はなぜ起きた?
巨大な爆発が起きる前、すでに横須賀港は炎上し、船は混乱状態に陥っていました。
これもまた、何らかの攻撃によるものと思われます。
しかし、不可解なのは、隊員たちが何が起きたのか全く把握できていない点です。
もしミサイル攻撃などであれば、「敵襲」として即座に認識できたはずです。
となると、この炎上は、あらかじめ仕掛けられていた爆弾の爆発など、外部からの攻撃と即断できない、秘密工作によるものだったのではないでしょうか。
草津で登場したエイトが「暗殺用ロボット」であったことからも、当時の日本で人知れず活動する工作員が存在した可能性は十分に考えられます。
なぜ避難していた?
これまでの描写から、この避難は突発的なものではなく、以前から計画されていたものだとわかります。
「攻撃を受けたから慌てて逃げる」という状況ではなかったのです。
しかし、その避難理由については明確に語られておらず、謎のままです。
とにかく、数ヶ月単位で準備された避難計画が、あの日実行されたということだけがわかっています。
人々を一箇所に集めて一網打尽?
海ほたる編で、ヨーコとアイリが大量のネズミに襲われるシーンがあります。
その際アイリは、腕から放たれるレーザーについて「バラバラの小さい相手にはあんまし効果ない」と語っていました。
これは、レーザー兵器が広範囲を焼き払うのではなく、一点にエネルギーを集中させる局所的な攻撃方法であることを意味します。
このレーザー兵器の特性を考慮すると、もし攻撃者が効率的に人類を殲滅しようとした場合、人々を一箇所に集める必要があったと考えられます。
住民を一斉に避難させて特定の港に誘導し、工作活動で港を炎上させてパニックを引き起こす。
そして、身動きが取れなくなったところを、上空からレーザー攻撃で一掃する。
これは、レーザー兵器の特性を最大限に活かした、見事なまでの「追い込み漁」と言えるでしょう。
他の港も攻撃された?
横須賀港以外の港が攻撃されたという直接的な描写は、今のところありません。
しかし、避難計画が全国規模であったとすれば、他の港からも同様に避難船が出航する予定だったはずです。
もし、この【一網打尽計画】が事実であれば、他の港も避難のタイミングを狙って攻撃された可能性は高いです。
当時の日本では、インターネットなどの通信手段が正常に機能していなかった可能性が考えられます。
横須賀港の現場ですら事態の把握ができていなかったことから、軍用の連絡手段さえ満足に使えなかったのでしょう。
通信手段が麻痺していれば、横須賀港が攻撃されたという情報が他の港に伝わるまでに、相当な時間がかかったはずです。
そして、情報が届く前に避難計画が実行されてしまえば、そこを狙い撃ちにすることは容易だったでしょう。