終末ツーリングの主人公であるヨーコとアイリは、長い間シェルター生活を送っていたようです。
その理由は、お姉ちゃんが「地上にはまだ危険がある」と言って、二人を地上へ出すことを許可しなかったからです。
最終的に、お姉ちゃんは「安全になったから」とヨーコたちを地上へ送り出しますが、彼女が言っていた「地上の危険」とは、一体何だったのでしょうか?
放射線や大気汚染
作中でも、箱根の機動戦闘車が「大気中の放射線量」をアナウンスしていたり、ヨーコたちが飲水を確保する際に水質を検査したりする場面があります。
このことから、当時の日本で放射線が脅威と認識されており、現代でも水質には注意が必要な状況であることがわかります。
放射線や大気汚染が安全なレベルに収まるまでシェルターで待機していた、という説には一定の説得力があります。
しかし、ヨーコたちが旅する地上は、予想以上に豊かな自然環境が保たれています。
大気汚染の影響があったとは思えないほど緑があふれ、野生動物たちも元気に生きています。
海洋生物の巨大化という異変は見られますが、地上の生態系は比較的健全です。
もし当時の日本で放射線や大気汚染が発生していたとしても、それだけで人類が完全に姿を消すほどの事態に陥るとは考えにくいかもしれません。
暴走しているロボット
ビッグサイトのホワイトボードには「警備(犬)ドローンの巡回時間」という書き込みが残っていました。
そして世田谷の住宅地などでは、活動を停止した四足歩行ロボットの姿が見られます。
このロボットこそが、人々を監視していた「警備犬ドローン」なのでしょう。
もし、この警備ドローンが人間を無差別に攻撃するような存在だったとすれば、地上は非常に危険です。
これらの敵対的なロボットが完全に機能を停止するまで、シェルターで待機していたという説も考えられます。
しかし、この説には一つ大きな疑問が残ります。
それは、お姉ちゃんが「どうやって地上の安全を確認したのか?」という点です。
ヨーコが地上に出てから、ネットや電波はほとんど通じず、お姉ちゃんとの連絡は途絶えています。
このような状況で、地上にいるすべてのロボットの稼働状況を正確に把握することは、ほぼ不可能と言えるでしょう。
機動戦闘車のように、何かのきっかけで再び動き出す可能性も否定できません。
敵対勢力
作中では、横須賀港が攻撃されるなど、何らかの敵対組織と交戦していた様子が描かれています。
しかも、その敵は非常に高い技術力を持っていたようです。
当然、そのような敵は「危険」な存在です。
ですが、もしそうなら、その強大な敵はどこへ消えたのでしょうか?
人類がその敵を打ち倒したのであれば、勝利した人類が地上に残っているはずです。
しかし、現在の地上には敵も、そして人類もいません。
双方が共倒れになったとは考えにくいでしょう。
このことから、「危険」の正体が敵対勢力だった可能性は低いと言えます。
太陽フレアの収束待ちだった?
太陽フレアは、電子機器に深刻な影響を与え、機能停止や誤作動を引き起こすことがあります。
アイリはロボットであるため、大規模な太陽フレアは深刻な脅威です。
磁気嵐の影響が及ばない地下シェルターで待機していた、という理由は十分に考えられます。
ですが、それならば他の人類も地下シェルターに逃げていて、ヨーコたちと同じタイミングで地上に出てくるのではと思います。
生き残った人間
シェルターから出られるようになったのは、「危険がなくなって安全になったから」です。
では、ヨーコたちが地上に出てから、そこに「無いもの」は何だったでしょうか?
それは、ヨーコとアイリ以外の人間です。
この仮説に立つと、「なぜ人間が危険なのか?」という新たな問いが生まれます。
ここで、一つの可能性を考えてみました。
- 人類を滅亡させたのはロボットであり、生き残った人間にとって、ロボットであるアイリや人間離れした能力を持つヨーコは「敵」であり、攻撃対象になり得た
というものです。
アイリがロボットであることは明らかですが、ヨーコもまた、傷の治りが異常に早いなど、人間とは思えない点が多く見られます。
もしかしたら、ヨーコのような存在が、当時は人類と敵対していたのかもしれません。
お姉ちゃんたちが「人間=敵」と認識していたのであれば、わざわざシェルターで待機する必要はありません。
アイリのような強力なロボットを地上に送り込み、残った人間を殲滅すればよかったはずです。
では、なぜ彼女たちは、人間がいなくなるまでシェルターで待ち続けたのでしょうか。
それは、ヨーコたちに、人間を憎んでほしくなかったからではないでしょうか。
お姉ちゃんが所属していた組織は、結果的にロボットで人類を追い詰めてしまいましたが、本心ではロボットが兵器として使われることを望んでいなかったのかもしれません。
彼らが本当に目指していたのは、人間とロボットが共存する世界だったのではないでしょうか。
しかし、人間側の憎しみは深く、もはや共存できる状況にはない。
だからこそ、旧人類が完全にいなくなったタイミングでヨーコたちを地上に解き放ち、彼女たちに「新しい人類の始祖(アダムとイヴ)」としての役割を託し、ゼロから世界を再構築させようとしたのかもしれません。
そもそも「安全になった」が嘘という説
とんでもない嵐に見舞われ、大量のネズミに襲われ、エイトという暗殺ロボットに命を狙われ、火山の噴火…。
地上では何度も危険がヨーコたちを襲っています。
こんな地上のどこが「安全になった」なんだよ!
ふと冷静になってみるとそう思ってしまいます。
そもそも、お姉ちゃんの言葉を額面通りに受け取っていいのでしょうか?
「安全になったから」という言葉は、ヨーコを地上へ送り出すため建前(優しい嘘)で、本当の目的は別にあるのかもしれません。
本当の理由1:シェルターの限界
シェルターの生命維持装置や食料が限界を迎え、「危険かもしれないが、もう外に出るしかない」という状況だった。
本当の理由2:ヨーコへのミッション
地上に残された特定の情報や物資を回収するため、あるいはヨーコ自身の特殊な能力を目覚めさせるための「旅(ツーリング)」そのものが目的だった。お姉ちゃんがヨーコと連絡が取れないのは、実は意図的なもので、彼女の自立を促している可能性も考えられます。
この場合、「地上の危険」はまだ存在しているかもしれません。
箱根で機動戦闘車が再起動したように、脅威はまだ眠っているだけで、ヨーコとアイリの旅は、我々が思っている以上にサバイバルなのかもしれません。
安全な環境が出来ていなかった
明確な危険があったのではなく「安全ではなかった」のではないか?と考えてみました。
たとえば、ヨーコはパンク修理で指にケガをしても、すぐに傷が治ります。
この「傷がすぐ治る」という環境が出来ていなかったためにシェルターから出ることができず、傷がすぐ治る環境が完成したから出ることができたのでは?と。
他の考察記事でも書いてきましたが、今現在の地球上は、ロボットが生きやすい環境になっている可能性があります。
クレアたち宇宙飛行士(当時の生き残り)が次々と体調不良で死んでしまっている状況から、「当時の人間には適さない環境」になっていると思われます。
逆に、ヨーコたちは傷がすぐ治って「適している環境」です。
今現在の地球には微粒子くらいのナノマシンが空気中にあり、それがロボットのケガをすぐに治すけど、人間にとっては異物を吸い込むから体調不良を起こす、と。
このナノマシンの散布が完了するまでの期間が「安全ではなかった」のではないか?
