『終末ツーリング』考察、今回は「秋葉原で流れていたラジオ放送」についてです。
人類が姿を消した世界で、なぜあのパソコンだけが今も稼働し続けているのでしょうか?
アキバ放送局は自動放送
ヨーコたちが「生存者がいるかもしれない!」と期待を胸に訪れた放送局。
しかし、その正体は、先代DJアキバタロー(人間)が遺した、2代目DJアキバジロー(AI)が喋る自動放送システムでした。
机の上にはカメラがセットされており、訪問者を感知すると「ゲスト」として紹介してくれる機能まで備わっていました。
このラジオをプログラムした先代アキバタローー氏は、いつか誰かがこの場所を訪れることを、固く信じていたようです。
いつから放送されているのか?
ラジオ放送が行われているのは、UDXビルの一室。
机などには「ただ死なない毎日が生きていると言えるのか」といった苦悩の殴り書きが残されており、このシステムが西暦2040年前後の混乱期に作られたものであることは間違いないでしょう。
なぜ2040年前後が苦しい時だったのか?は別記事で考察しています。
『終末ツーリング』の世界では、「終末から何年経っているのか?」という明確な年代は語られていません。今回は、作中に散りばめられた様々なヒントから、【物語の舞台が西暦何年なのか?】を徹底的に考察していきます![…]
稼働時間が長すぎるパソコン
これまでの考察から、ヨーコたちがいる現在の西暦は【2100年前後】と推測されます。
そう仮定すると、このラジオ放送を続けるパソコンは、60年近くも稼働し続けていることになります。
あらゆるインフラが崩壊した世界で、このパソコンだけが正常に動き続けているのは、驚異的であると同時に、あまりにも不自然です。
この謎を説明できる可能性は、2つ考えられます。
- パソコンが何十年も経ってから起動するようにタイマーセットしていた
- 先代DJアキバタローは最近まで生きていた
まずは起動タイミングをタイマーセットしていたので実際に稼働していた時間はあまり長くないという説。
ヨーコたちが地上に出てくるちょっと前に起動するようにしていれば、パソコンの稼働時間は少なく出来ます。
もちろん、長期間放置されたことによる経年劣化で起動しないリスクはありますが、理論上は可能です。
しかし、この説には大きな矛盾があります。
AIのDJは「大変なこの時代をともに生きるキミに…」と語りかけていました。
これは、未来の生存者ではなく、放送当時に苦難の中にいた人々に向けられたメッセージだと考えるのが自然です。
したがって、未来の特定の時点を狙ったタイマーセットであった可能性は低いと言えるでしょう。
そこで浮上するのが、「先代DJアキバタローが、ごく最近まで生きていた」という説です。
2040年頃、多くの人々が日本から「避難(脱出)」しようとしましたが、横須賀港への攻撃などもあり、計画は決して順調ではありませんでした。
つまり、脱出できずに日本に取り残された人々も、相当数いたのではないでしょうか。
もし先代DJアキバタローがそうした生存者の一人であり、最近まで生きていたとすれば、彼にとって「ずっと大変な時代」は継続していました。
彼が同じ時代を生きる仲間へ向けてメッセージを遺し、その直後にAIが放送を引き継いだとすれば、パソコンの稼働時間が短いことと、AIのセリフの両方に説明がつきます。
AIの喋りがハイテクすぎる
先代アキバタローは、本を見て自作PCを作ってAIもプログラムしたようです。
しかも、当時の日本はインフラが崩壊してネットも使えず、初歩的なことしか書いていない本だけを見て作ったと思われます。
「AI素人」と思われる先代アキバタローが、こんなに臨機応変にトークを切り替えられるAIをプログラムできるのでしょうか?
特に、ネットインフラが崩壊し、外部のサーバーや最新のライブラリにアクセスできないであろう孤立した環境です。
この環境で、訪問者をリアルタイムに認識し、自然な会話を生成するAIをゼロから構築するのは、たとえ専門家でも至難の業でしょう。
このAIの性能は、当時の技術レベルから見て「異常」と言えるかもしれません。
ここで一つの仮説として、AIが進化したというものがあります。
先代アキバタローが最初に作ったラジオDJのAIは、本当に機械的に喋るAIだった。
ですが、「なんらかの作用」によりAIが急速に成長して、あの流暢な喋り方になった、と。
ここからはストーリーの終盤?の情報と合わせての考察になります…。
【青森・三沢基地編】にて宇宙飛行士の生き残りと出会うことになりますが、その宇宙飛行士たちは地球に戻ってきてから体調不良を起こして命を落としています。
そして、ヨーコとアイリは傷の治りが異常に早いです。
実は空気中にはナノマシンが大量にあって、機械やAIの成長を促すけど、それは人間にとっては「毒」になっていると。
このナノマシン(仮)によって、AIアキバジローはどんどん成長していって、あれほど流暢な喋りもできるようになったし、パソコンもギリギリで持ちこたえられていたのでは!?
この仮説だと、秋葉原で起きていた2つの奇跡、「60年動き続けるPC」と「人間と見紛うAI」の両方に説明がつきます。
そうなると「動物たちは普通に生きてるから、空気環境のせいじゃないのでは?」と思うところですが、もしも動物たちもヨーコたちと同じ状態だったら…。
この世界の謎は、まだまだ奥が深そうですね。
