『終末ツーリング』の空に浮かぶ、静かなる異変――「欠けている月」。
作中でヨーコたちはほぼ言及しませんが、多くの読者が気になっている謎ではないでしょうか。
今回は、この月の傷跡が意味するものについて考察します。
巨大過ぎる満月
嵐の前の静けさが漂う【千葉・流山編】で、ヨーコが巨大な満月を見て胸騒ぎを覚えるシーンがあります。
この時の月は非常に大きく描かれており、「何らかの理由で月が地球に接近しているのでは?」と読者に思わせる演出でした。
しかし、この月の大きさの謎については、【海ほたる編】でアイリが解説しています。
月が地平線に近い位置にあると、地上の建物などと比較されることで大きく見えてしまう「月の錯視」という現象だそうです。
実際にアイリには、月の大きさはいつも通りに見えていました。
言及されない月の「欠けた部分」
満月が大きく映し出された際、その左上には、何かが衝突したかのようなクレーター状の「欠け」が存在します。
しかし、この明らかな異常に対して、ヨーコもアイリも一切言及しません。
これはおそらく、ヨーコたちは「欠けていない月」を知らないので、「月は欠けているもの」という常識があるので違和感がなにもないため言及しないのでしょう。
レーザー攻撃により欠けた?
横須賀港が攻撃された際、上空からレーザーのような攻撃を受けて巨大なクレーターができていました。
そして、月の欠け方も、このレーザー攻撃が直撃したかのように見えます。
アイリもまた、右腕からレーザーを放つことができます。
草津でエイトを攻撃した際、そのレーザーはターゲットを外れ、温泉施設や背後の山を一直線に貫きました。
その弾道は、まるで月の欠け方を再現しているかのようでした。
これらのことから、月の欠けは、何者かによるレーザー攻撃によってできたものである可能性が非常に高いです。
誰がレーザー攻撃をしたのか?
まず、この攻撃がどこから行われたのかを考えてみましょう。
月の同じ面は常に地球に向けられています。
つまり、月の欠け方から見て、攻撃は「月と地球を結ぶ直線上」のどこかから行われたと断定できます。
ここで思い出されるのが、横須賀港を真上から攻撃した存在です。
航空機からの攻撃であれば地上からでも認識できたはずなので、やはり宇宙空間に配備された兵器からの攻撃と考えるのが自然でしょう。
なぜ月を攻撃した?
ヨーコたちがつくばのプラネタリウムで見た情報によると、当時の人類は『月面基地でのヘリウム3による核融合発電実験』に成功していました。
この月面の発電施設を破壊するために、月が直接攻撃されたというのが最もシンプルな仮説です。
これまでの考察で、終末前の地球では【人間 vs ロボット】の戦いが起きていた可能性を指摘してきました。
もしロボット側が、人間の重要なライフラインである「電力」を断つために月面発電施設を攻撃したとすれば、その動機は十分に理解できます。
人工衛星を攻撃した流れ弾説
【吉見百穴】でアイリが宇宙へ行った際、破壊された人工衛星の残骸が漂っていました。
もしかすると、この人工衛星を狙った攻撃の流れ弾が、月に着弾してしまったという可能性も考えられます。
しかし、この説には疑問も残ります。
ロボット側がレーザー兵器を使用するためには、膨大な電力が必要です。
その重要なエネルギー源となり得る月面発電施設を破壊することは、自らの首を絞める矛盾した行動ではないでしょうか。
月面発電施設を攻撃するメリットを考えると、意外にも「人類側」にも動機が浮上してきます。
それは、敵であるロボット側のエネルギー源を断つためです。
人間は電力がなくても生きられますが、ロボットは電力がなければ活動できません。
追い詰められた人類が、敵の活動を停止させるための最終手段として、自らのライフラインである月面発電施設を破壊した――。
皮肉ですが、それも十分にあり得るシナリオです。