『終末ツーリング』において、主人公のヨーコは時折「夢」の中で、人類がまだ存在していた頃の世界を垣間見ます。
人類が姿を消した真実を解き明かす鍵になるとも思われる、この「ヨーコの夢」。
今回は、その謎について考察します。
夢で一緒にいる人はだれ?
ヨーコとアイリは、【つーりんぐらむ】に投稿されたお姉ちゃんの足跡を辿りながら、終末世界を旅しています。
そして不思議なことに、ヨーコはお姉ちゃんが過去に訪れた場所へ行くと、決まって「夢」を見るのです。
夢の中では、ヨーコが誰かと一緒にその場所を旅していた記憶が、鮮やかにフラッシュバックします。
旅の序盤では、その同行者の正体は謎に包まれていました。
しかし、ヨーコ自身も「一緒にいる人」の存在を意識し始め、旅を進めるうちに、その正体が明らかになります。
仙台で見た夢の中で、ヨーコと共にいた人物。
それは、「お姉ちゃん」でした。
ヨーコの夢は実際に起きたことなのか?
ヨーコの夢は非常にリアルで、シェルター暮らしだった彼女が知るはずのない、詳細な世界の風景が描かれます。
ヨーコが持つ外の世界の情報は、【つーりんぐらむ】に投稿された画像や動画だけのはずです。
夢が「実際の記憶」であることを強く示唆する場面が、作中には何度か登場します。
夢の中で自動販売機の下に1000円硬貨を落としたら、今の自動販売機の下から1000円硬貨が見つかる
#海ほたる編
最初に夢と現実のリンクが示されたのは、海ほたるのシーンです。
夢の中で自動販売機の下に落とした1000円硬貨を、夢から覚めた後、実際に同じ場所から発見します。
しかし、この時アイリは「硬貨の年号は夢と同じ?」と鋭い指摘をします。
これは、「夢はあくまで夢で、現実の硬貨は別人が落とした偶然の一致ではないか」という可能性を示唆しています。
海ほたる編では杞憂で終わった感がありましたが、柏崎編でハッキリと夢と現実がリンクします。
恋人岬で書いた絵と同じものが実際に今もあった
#柏崎編
この時点ではまだ確信には至りませんでしたが、【柏崎編】で、夢と現実が明確にリンクします。
「夢の中の恋人岬」で、ヨーコは柵にペンギンの絵を描いていました。
夢から覚めてその場所を探してみると、夢で描いたものと全く同じペンギンの絵が、実際に残されていたのです。
これに対しヨーコ自身は「過去と未来を行き来できるタイムリーパーなのでは?」と冗談めかしていましたが、この一件により、彼女が見る夢が「過去の体験に基づいた記憶」であるという説が、極めて濃厚になりました。
本当にお姉ちゃん?本当の記憶?
しかし、そこに大きな矛盾が生じます。
別記事の考察でも触れたように、『終末ツーリング』の現在の時代は、人類がいなくなってから数十年、あるいは数百年が経過していると考えられます。
だとすれば、ヨーコが若すぎるのです。
「当時の日本を旅していた」にもかかわらず、「現在は若い少女の姿である」という事実は、常識ではありえません。
この矛盾を解決する可能性として、ヨーコが記憶だけを引き継いだクローンである、あるいは長期間コールドスリープ状態にあった、という説が考えられます。
あるいは、もう一つの可能性。
それは、夢で見る記憶が「植え付けられた偽の記憶」であるという説です。
本当はお姉ちゃんが一人で旅をし、その記録(日記や動画など)を元にして、あたかもヨーコも「一緒にいた」かのような記憶を、何者かが人工的に作り出した、という考え方です。
この説は、物語の他の多くの謎とも整合性が取れるため、非常に有力な可能性と言えるかもしれません。