『終末ツーリング』では、人類がいなくなった理由の一つとして、「放射線による汚染」の可能性が示唆されています。
しかし、作中で描かれる自然豊かな地球の姿からは、深刻な放射線汚染があったとは考えにくいのも事実です。
果たして、終末前の世界は本当に放射線に汚染されていたのでしょうか?
放射線に汚染されていた?
箱根で動かなくなっていた機動戦闘車が「大気中の放射線量は??0mSv」とアナウンスしている
#箱根編
作中で最初に放射線汚染の可能性が示唆されたのが、このシーンです。
箱根で再起動した機動戦闘車が、防災無線として「大気中の放射線量は~」とアナウンスを始めます。
このことから、当時の日本では放射線量を常に監視しなければならないほど、緊迫した状況にあったことがわかります。
ただし、このアナウンスが現在の放射線量を正確に示しているかは不明です。
アイリが「起きたばっかで寝ぼけている」と評しているように、再起動直後のシステムが誤作動している可能性も高いでしょう。
ちなみに、アナウンスされた「???mSv」という数値がもし事実なら、それは極めて危険なレベルです。
シェルターのディスプレイに「汚染指数」のデータ表示
#横浜・横須賀編
ヨーコたちが暮らしていたシェルター内のディスプレイには、室内の温度や湿度と並んで「汚染指数」という項目が表示されていました。
これが大気汚染のような一般的なものを指すのか、放射線による汚染を指すのかは定かではありません。
しかし、シェルターを建設した人々が、何らかの「汚染」を強く警戒していたことは間違いありません。
飲水を確保する時に「汚染物質」や「放射線量」を測定している
#世田谷編
東京の等々力渓谷で飲水を確保する際、ヨーコは測定機器を使って水の安全性を確認します。
その測定項目の中には「放射線量」も含まれていました。
わざわざ測定するということは、水が放射能に汚染されている危険性があった、ということです。
しかし、この時の測定結果は「異常なし」。
少なくとも、この場所の水は放射能に汚染されていませんでした。
放射線の危険は本当にあったのか?
先ほどの飲水検査の結果もそうですが、作中で描かれる自然は豊かで、野生動物たちも元気に生きています。
また、機動戦闘車の運転手らしき遺体や、横須賀港での「ロボ父さん」の回想シーンでも、人々は防護服のようなものを着用していません。
「防護服の生産が追いつかなかった」という可能性も考えられますが、それにしても、当時の人々は比較的普通の生活を送っていたように見えます。
しかし、その一方で、人々は船で日本から一斉に避難しようとしていました。
もし放射線が原因でなかったとすれば、彼らをそこまで追い詰めた「別の危険」が存在した、ということになります。
放射線はデマだった?
その可能性は十分に考えられます。
「放射線が危険だ!」という情報が流れれば、人々は恐怖から外出を控え、社会機能は麻痺します。
経済活動は停滞し、もし戦争中であれば、兵器の生産などにも深刻な影響が出るでしょう。
そして、そのデマを打ち消すために、機動戦闘車が毎日「現在の放射線量は安全です!」とアナウンスして回っていた、という仮説が成り立ちます。
これまでの考察でも触れたように、当時の日本ではインターネットが正常に機能していなかった可能性が高いです。
社会に広がってしまったデマを訂正する手段が、防災無線のような原始的なアナウンスしか残されていなかったのかもしれません。