『終末ツーリング』の世界では、人々は絶望の中で消え去ったのではなく、どこかへ「避難」した痕跡が多く残されています。
もしかすると、彼らはいつか地球に帰ってくるつもりだったのではないでしょうか?
今回は、残された人々の痕跡から、彼らの最後の希望について考察します。
当時の人達は「避難」していた
【横須賀港】では、自衛隊と思われる組織が民間人を船でどこかへ避難させようとしていましたし、【大洗】には「避難船」の案内看板が残されていました。
また、【ビッグサイト】のホワイトボードには「脱出前の思い出」という切実な書き込みが見られます。
さらに、【秋葉原】では、ラジオ放送の自動プログラムを開発した初代DJアキバジローが「プログラム、間に合って良かった」というメッセージを残しています。
これは、「避難の期日までに、未来へのメッセージを残すことができて良かった」という意味だと考えられます。
これらの痕跡は、この「避難」が、突発的なパニックによるものではなく、ある程度の期間をかけて準備された、計画的なものであったことを示しています。
脱出ということは帰ってこない?
基本的に当時の人々は「避難」という言葉を使っていますが、一部では「脱出」という、より切迫した表現も見られます。
「避難」という言葉には、一時的に危険を避け、事態が収束すれば元の場所へ戻ってくる、というニュアンスが含まれます。
しかし、「脱出」となると、その場所を完全に見捨てる、あるいは「もう二度と戻れない」という、より絶望的な響きを帯びてきます。
船で避難したということは、その目的地は国外であった可能性が高いです。
もし日本国内の安全な場所へ移動するだけなら、陸路を使えば済む話だからです。
しかし、当時の地球が日本だけ危機的状況にあったとは考えにくいです。
おそらく、世界中が同じように絶望的な状況だったのではないでしょうか。
そうなると、作中でも度々示唆されているように、彼らの目的地は国外ですらなく、「宇宙」だったという可能性が浮上してきます。
人々は戻ってくるのか?
公的には「避難」とされていた以上、建前上は、いつか帰還する予定だったと考えられます。
その可能性を裏付けるのが、草津で出会ったロボット「エイト」の存在です。
彼は、ヨーコたちが出会う5年前に起動するようにタイマーがセットされていました。
これは、エイトを設置した人物が、ヨーコたちが地上に出てきたこの時代に、何らかの重要な出来事が起こると予測していたことを意味します。
人類が帰還する予定の年、その5年前にエイトを起動させ、来るべき日のために草津のインフラを復旧させようとしていたのではないでしょうか。
エイトのプログラムをセットした人物は、それなりの地位にあり、一般市民よりも世界の真実に詳しかったはずです。
その人物が、未来の特定の時点を指してタイマーをセットした。
この事実は、人類が帰還する具体的な計画が存在していたことの、何よりの証拠と言えるのかもしれません。